一級建築士製図試験用語集

一級建築士設計製図試験について基礎知識とその用語を解説します。

“建築常識”と“製図試験”

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by Peyton (h29卒業生)

 山口先生から『(受験生だった時に)解説して欲しかった用語は?』と聞かれた時、真っ先に“建築常識”と答えました。H30年度試験の傾向もあり、他の製図試験サイトでも“建築常識”という言葉が溢れていますが、過去の受験生としては、この“建築常識”とは、“付き合い方”と“距離感”が重要だと思います。

それを、私が受験したH29年度試験の本試験から考えてみます。

h29を俯瞰して振り返る

ご存知の方も多いと思いますが、この年は“リゾートホテル”がテーマの試験で、眺望が南東側に限定されるにも関わらず、北側に客室を作る人が続出しました。『眺望がある側に客室を作る』という“建築常識”を踏み外した人が多かったわけですが、製図試験の受験生がそんな常識外れの人ばかりのわけがありません。これには伏線があったと、私は考えています。

伏線、落とし穴、トラップ、少数派、建築的常識。

一言でいえば、要求された部屋数が多く、全てを眺望側に向けるのが難しかったのです。35㎡系だったので、8m×8mスパンを使い、1スパンを半分に割れば、比較的容易に対応できるのですが、少数だったと思います。これには、“建築常識”が関わっていると思います。

『リゾートホテルなのだから、1スパンを半分に割るビジネスホテルのような間取りは考えらえない』
『8m×8mスパンは、スラブの30㎡ルールから考えて、採用することはありえない』

この上記二つも立派な“建築常識”です。大手の資格学校では、このような指導をしていたとも聞きました。

『眺望が悪い(隣に建物等がある)のならともかく、良好な山側の景観があるなら、それもアリ』

というのも“建築常識”です。
実際、H25年のセミナーハウスの場合、同様に客室が多い要求にて、H29とは逆に、眺望を重視して北側に客室を向けなかった人は“辛いエスキス”になりました。ただ、H29年度は、この“眺望要求”について、問題文で明確に書かれていたので、問題文に書かれたことを軽く見た受験生には辛い展開になりました。(『多くの客室をそちら側に向けた』でも配慮したになりますしね・・。実際、そういうリゾートホテルもありますし)

建築常識は『覚える』だけでは逆に両刃の剣

まとめますと、“建築常識”は『覚える』だけでは逆に両刃の剣となり、“その年の課題”、“問題文”、“要求室の状況”によって、『優先順位がつけられる』ようにならなければならないということだと思います。こうなって来ると、この試験には“オモテ”も“ウラ”もなく、“ウラ”を求める人はむしろ逆の“建築常識”を掴まされる結果となり、建築設計に興味があるか?という普段からの視座が短時間試験の勝負を分けるような気がしてきます。

受験生時代、エスキスに失敗すると、山口先生に『こんな建物見たことがある?』と言われたのを思い出します。
“建築常識”とは、要するに『見たことあるか』がポイントなのかもしれません。

次年度からは(学習時間がたっぷりある)大学生が受験生に加わるそうです。このまま、合格率だけを一定に保つ試験方式が続くのであれば、私のように(建築学科を卒業していない)設備屋には辛い試験になってきそうです。設備屋の皆さん、今年は頑張ってください。

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