一級建築士製図試験用語集

一級建築士設計製図試験について基礎知識とその用語を解説します。

謎の床面積算定ローカルルール

f:id:seizushiken:20190425111539j:plain


製図試験には謎の床面積算定ローカルルールが存在します。

このページではそれを扱います。

法52条6の容積率対象非算入について

「6 第一項、第二項、次項、第十二項及び第十四項、第五十七条の二第三項第二号、第五十七条の三第二項、第五十九条第一項及び第三項、第五十九条の二第一項、第六十条第一項、第六十条の二第一項及び第四項、第六十八条の三第一項、第六十八条の四、第六十八条の五、第六十八条の五の二、第六十八条の五の三第一項、第六十八条の五の四(第一号ロを除く。)、第六十八条の五の五第一項第一号ロ、第六十八条の八、第六十八条の九第一項、第八十六条第三項及び第四項、第八十六条の二第二項及び第三項、第八十六条の五第三項並びに第八十六条の六第一項に規定する建築物の容積率の算定の基礎となる延べ面積には、政令で定める昇降機の昇降路の部分又は共同住宅若しくは老人ホーム等の共用の廊下若しくは階段の用に供する部分の床面積は、算入しないものとする。」

つまり、

「第六十八条の五の四に規定する 地区計画、防災街区整備地区計画又は沿道地区計画の区域内に住宅については、建築物の容積率の最低限度が設定されていない限り」「全ての建築物の延べ面積には、エレベーターの昇降路の部分を算入しないものとする。又、共同住宅や老人ホーム等の、共用の廊下や階段部分の床面積も、算入しないものとする。」

さらに簡単に言うと、共同住宅を用途変更する際に、老人ホーム等に変更すると、共用の廊下や階段部分が容積率対象になってしまうため、違法状態になることから用途転用できなかったんだけど、共同住宅並みに、容積率からは除くことができるようにします、ということです。

そして、製図試験ですが、この法52条6の容積率除外規定は使いません

 

DSは床面積に含むか含まないか。

さらに謎なのが、DS(ダクトスペース)の扱いです。DSは通常床がなく、吹抜けているため、床面積算定に含みません。しかし、製図試験では含んだり、含まなかったりしているんです。
1)その階に床があり、空調機器が設置してあり、還気(RA)を受けるDSの場合
→当然、床があるので床面積算定に含む
2)下階もしくは上階からのDSで床がなく吹抜けている
→本来、床がないので床面積に含まないのだが、製図試験の標準解答例では含む。(ローカルルール)
3)吹抜け内にある床のないDS
→2)のルールから考えると床面に含むはずが、製図試験の標準解答例では含んでいない。(基準法の常識的解釈)

f:id:seizushiken:20190425153726p:plain


 

ダッチロールする問題文

これは前回書きましたが
「屋外施設 → その他の施設 → 再び 屋外施設」について。

 

平成20年までは「屋外施設」だった外構部分が、平成21年度から「その他の施設」に変わり、ピロティ形式でも屋外と見なされるようになりました。
また「「その他の施設等」は、床面積に算入しないものとする。」しかし、しかし。

なぜか平成29年度から突然外構部分が「屋外施設」に戻りました。

そして、床面積算定方法が変わりました。

「この課題の床面積の算定においては、ピロティ、塔屋、バルコニー及び屋外階
段は、床面積に算入しないものとする。なお、ピロティ等を屋内的用途に供す
るもの(娯楽スペース、設備スペース、駐車場等)については、床面積に算入す
るものとする。」
つまり、屋外であっても、屋内的用途で使う部分については床面積に入れなさいということです。

では屋内的用途とは何か、というと下記の3つがあげられています。

娯楽スペース

ですから、広場がピロティ下部に一部はいった場合、娯楽スペースと見なされ、床面積に算入することになります。では、用途のない通路や単にピロティにしただけで植栽にしている部分は、娯楽スペースでないから床面積算入しなくてよいのでしょうか。

設備スペース

では2階に設けられた設備バルコニースペースはどうでしょうか。

室外機を屋内に置くことはないので、屋内的用途の設備スペースとは言えませんし、キュービクルは屋内でも屋外でもおけるので、屋外型キュービクルとすると屋内的用途とは言えませんが、実際の標準解答例では、屋外空調機置場を床面積に算定しています。これは屋根がかかっているため、屋内的用途とみなしたのか?3方向壁なので十分に解放されたスペースではないということで床面積に算入したのか全くわかりません。

f:id:seizushiken:20190425153737p:plain

駐車場等

駐車場は、車スペースのみなのか、そのスパンのみなのか、車路も含むのかがわかりません。しかも「等」って駐輪場は入らないのかな。わかりません。

 

さらに平成30年度も変更

「この課題の床面積の算定においては、ピロティ、塔屋、バルコニー及び屋外階段は、算入しないものとする。なお、ピロティ等を屋内的用途に供するもの(娯楽スペース、設備スペース等)については、床面積に算入するものとする。」

これは駐車場が出題範囲に含まれていなかったからです。

「なお、この屋外テラスは、床面積には算入しない。

これは、屋外テラスは、ピロティ等にしたとしても屋内的用途とは見なさないということを書いているわけです。ふう。

 

結 論

基準法がルールではなく、問題文の「2.建築物」の出題部分が床面積算定方法です。しかもそれはh29から変更してきています。したがって、この出題部分のまま、計算するしかなさそうです。本当に基準法を理解している受験生には気の毒な話です。

そして疑わしき表現については、ここまでを算定した、していないという点を図面及び面積表にアピールすることしかありません。こう解釈した、と示すことも一級建築士の職能だと考えてください。

結論ですが、

(1)問題文の「2.建築物」の出題部分が床面積算定方法に従う

(2)面積表には計算部位を明示する

(3)DSについては、面積算入ローカルルールがある(ようだ)

(4)微妙な面積算定にならないように留意する

(5)それでも微妙な表現になる場合は、但し書きを必ず付ける

 

製図試験に臨む際は、常にこのルールでやることで計算ミスを未然に防ぐことが重要になります。