一級建築士製図試験用語集

一級建築士設計製図試験について基礎知識とその用語を解説します。

「建築的常識」について

f:id:seizushiken:20190214222714j:plain

■建築に携わる者の共通言語となるべき基礎知識

製図試験でよく話題になるのが「建築的常識」です。

そもそも建築に携わる者として当然知っておくべき常識をさすようなのですが、既に建築そのものが多岐に渡っており、設備屋さん、構造屋さん、設計事務所、ゼネコン、など立場によって、その「常識」は全く異なります

その上で、建築的常識とは、立場が違っていたとしても、建築物を設計施工していく上で共通言語となるべき基礎知識だと考えるべきでしょう。

つまり設計者・施工者等立場が違っていても「それはそうだよね~」と言える概念が「建築的常識」だと言えます。

■製図試験ではどの程度をイメージすればよいのか

とは言っても、実務での建築的常識と、製図試験における建築的常識には、大きな隔たりがあります。例えば設備では日本のトップクラスの仕事をしている方が、受験生になると、製図試験の建築的常識がわからない!なんてことがよくあります。この「建築的常識」が欠けていると、標準的な答案プランが描けないことが多いと感じていますが、製図試験comでも、この「建築的常識」をお教えすることについては、かなり苦心しています。

現時点での私たちの結論は「一般の人が普通に考える建築物のあり方をもって建築的常識とする」です。

■一般の人が普通に考える建築物のあり方とは?

では、この「一般の人が普通に考える建築物のあり方」とはどのようなものなのでしょうか。読んで字のごとくなのですが、実はこれを伝えるのは非常に難しいと感じています。事例を出していきましょう。

  • 敷地に対して建築物の主出入口がわかりやすい位置にあること。
    (わかりにくい位置にあるのは非常識)
  • 敷地境界からの距離が適正であること
    (極端にあいていたり、狭かったりするのは非常識)
  • 駐車場、駐輪場は、主出入口の近くの位置にあること
    (離れているのは非常識)
  • エントランスホールは広々として気持ちがいいこと。
    (狭くて、変な形のエントランスホールは非常識)
  • 管理部門はまとめられていて一般の人の動線と分けられていること
    動線が混ざる計画は非常識)
  • 各部門の動線及びゾーニングがわかりやすいこと
    (わかりにくい部門ゾーニング動線は非常識)
  • 新築なので、廊下のクランクは最小限とすること
    (廊下がクネクネしている新築建物ってないですよね)
  • 建築物の形状ができるだけ整形であること
    (ガタガタな建築物は非常識)

とこんな感じです。全く建築を知らない一般の人でも納得いくような内容ですよね。何の奇のてらいもなく「普通、こう考える」であろう感覚こそが、製図試験における「建築的常識」だと言えるでしょう。また「こうだと気持ちがいいよね」という感覚に近いかもしれません。

■この「建築的常識」を身につけるには

試験勉強的なノウハウはありません。ただ常に現況の建築物を意識して見ることです。現存している建築物のほとんどは、この建築的常識に照らし合わせてみれば、ごくごくその範囲内の計画となっています。

そういう現況の建築物を建築的常識という観点で眺めていくと、
「あれ、このアプローチは下手」
「せせこましいエントランスホールだ!」
「使いにくい駐車場。」
「主出入口から遠すぎる駐輪場」
「わかりにくくて使いにくい部門配置」
「死角の多い廊下」なんてのを発見します。

その時、あなたが設計担当者ならどう設計していたのか。

常にそういう視点を持つことで「建築的常識」は身についていくと考えています。

■認識なしに計画なし。

世の中の一般の方が観ている「建築」の使い勝手や計画について、普段から興味がないと考えられます。どれだけ仕事ができたとしても、この製図試験での「建築的常識」はクリアしておきたいものです。

この「建築的常識」の感覚の認識と理解ができていたとしても、即プランニングに反映できるとは限りません。でも認識のないところに計画はあり得ません。

3次元の建築空間での体験がベースになりますが、図面を観たときにも同じように、ありえる、あり得ないの判断ができることが次のステップとなります。

 

 製図試験の建築的常識には「ステップで攻略するエスキース

ステップで攻略するエスキース – 製図試験.comSTORE